相続放棄手続は段階を踏む。

相続放棄について。私の弟が亡くなったとの知らせが届きました。弟に家族はいませんでした。ですので、兄である私と両親の相続放棄手続をまとめて行いました。そしたら、裁判所から、「あなた(=相談者自身)は、まだ相続人ではないので、手続きをやり直してください」という手紙が届きました。亡くなったのは私の弟ですから、私自身も相続人となると思って相続放棄する必要があると考えたのですが、裁判所の手紙の内容がイマイチよくわかりません。どういうことですか?

A 自分の弟が亡くなった。その弟に家族はいない。つまり、弟の妻や子供への相続ということは考えられない。であれば、健在の両親、それから兄である自分が相続人でしょ!?というように考えるお気持ちはよくわかります。だからこそ、ご両親とご相談者自身の相続放棄を同時に行われたのでしょう。

 この、相続放棄手続を同時に行われたであろう点が、今回のポイントになります。

Q 裏返すと、ご両親分とご自身分を【同時に手続した点】が、ちょっとまずかった!?

A おそらくそういうことです。実は、私も弁護士なりたての時に、同じことを思いついた挙句、代理人弁護士として失敗した経験があります。

 ご両親もご相談者も相続人です。正確に言えば、相続人になりうる立場にある者です。しかし、それでも相続人となるための候補者順位が決められています。第1順位相続人、第2順位相続人…っていう言葉ですね。結論を言えば、ご両親とご相談者(兄弟姉妹)は、この相続人資格を与えられる順番が異なる。一緒ではない。だから、【同時】に相続放棄をすることは理論的にはありえないというお話になるのです。

Q 亡くなった弟様にはご家族がいらっしゃらないということですから、そうなるとどうなります?

A まずは、ご両親が1番目の相続人候補者となります。

 もしご両親が相続すると決めた場合には、ご相談者は相続人候補者にすらなりません。一旦、親レベルで相続問題は解決したことになります。したがって兄弟姉妹が相続や相続放棄をすることはあり得ません。

 逆に、ご両親が相続放棄をした場合には、ご相談者が2番目の相続人候補者となりますから、この時点でようやく、相続放棄をするか否かを判断すべき立場に置かれることになるのです。あくまで両親が相続放棄を【正式に家裁で手続した場合】。単に意向として【表明しただけの場合】はNGですよ。

Q ご両親が相続放棄手続を【した後に】にはじめて、ご相談者も相続放棄をすることができる、ということですね??

A そう。理論的、時系列的にみて、第1順位と第2順位の相続人候補者が同時に相続放棄をすることはありえない。したがって、第1順位のご両親の相続放棄手続の最中に、第2順位のご自身の相続放棄手続をすることもあり得ない。あくまで、家庭裁判所が【ご両親の相続放棄を受理した以降】でなければならないわけです。

 過去に代理人弁護士として私が失敗した際は、二度手間をかけたくなかったからという、単なる私の性格が大きく影響したのですが、弁護士たるもの、さすがに法的理屈をスッ飛ばしてはいけませんね(笑)

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