生命保険金は相続の対象とならない…とも限らない。

【ご相談内容】

生命保険金の相続について質問です。父が亡くなり、相続人となる私と弟の2人の話し合いで、できるだけ法定相続分の半々になるように話がまとまりかけたのですが、最近、父が相当昔に生命保険を掛けていたことがわかり、その保険金受取人は私になっていました。生命保険は相続の対象から外れると聞いていたのですが、弟は「保険金の半分をくれ」といってきます。どっちが正しいのでしょうか?

Q 保険金受取人が相談者になっている保険が見つかった。保険金の半分は弟に取得する権利があるのか?というご相談です。確かに、私も ” 生命保険は相続の対象から外れる ” というのは私も聞いたことがあります。

A おっしゃるとおり、遺産をどのように相続するのかという場面(民法の世界)においては、遺産分割協議をする際の【遺産に含まれない】という考え方が原則なんです。

 よく勘違いされるのが相続税の計算の場面(相続税法の世界)。相続税はいくらになるのか?という問題においては、非課税枠の話はさておき、とりあえずは【遺産に含める】方向で検討されます。→ 国税庁HP

今回のご相談は ” 民法の世界 ” の話ですので、原則含まないんです。

Q ということは、逆に言えば【遺産に含める】という例外もあるわけですね?

A 結論から言えば、保険金受取人となった相続人とそうでない相続人との間で著しく不公平感が生じるような場合には、【遺産に含める】ことになります。

 たとえば、親が不動産も預金も残さず、生命保険金1000万円だけ掛けた状態で亡くなったとします。受取人は二人兄弟の1人。原則として生命保険金は遺産に含まれないので、遺産分割協議をするまでもなく結論がでてしまいます。でも、受取人に指定されなかった残りの兄弟からすれば面白くはないでしょう。もし仮に親が生命保険を掛けていなければ、親の通帳に1000万円近く残っていたかもしれません。預金は遺産になるので「2分の1くれよ」といえるわけです。500万円ずつ分配という結論になるはず。ここに、生命保険金も遺産分割の対象とすべきだ言う主張が生まれる土壌がある。

Q どういう場合に、例外的に取り扱われるのですか?

A 最高裁判所が基準を出しているのですが、ポイントは、単なる不公平とか不満ではなく、【著しい不公平感】です。

 たとえば、長男には都心部の不動産と預貯金を、二男には田舎の不動産のみをあげるようなケース。あるいは先程のケースのように、遺産全体の額に比べ生命保険金の額が高額であるような場合。あとは二男が親と同居して、ずっと世話・介護もしてきたにもかかわらず一銭ももらっていない、というようなケース。不公平感が半端ないですよね。ですから、今回のご相談も、金額の多寡、保険金の占める割合、被相続人との関係性その他不公平と思わせる事情如何によっては、弟が正しいこともあるんです。

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