相続における利害対立~利益相反問題~

【ご相談内容】

父が亡くなり、私と私の弟、それに母の3人で、父の遺産をどのように分けるか話し合いをしなければなりません。ただ、母がだいぶ呆けていて、うまく3人で話し合いができるかどうか分かりません。どうすればよいでしょうか?

Q ご相談者は、今後、いわゆる「遺産分割協議」をされるということですね?

A そうでしょうね。相続人全員が集まって、父親の残した遺産をどのように分割するかについて話し合うことを「遺産分割協議」といいます。

Q 相続人全員で話し合うことが必要なのですね?

A 相続人が一人でもかけると、せっかくの遺産分割協議書も無効なものとして扱われますから、今回の場合、母親が呆けているからという理由で、子供達だけで遺産分割協議をしても効力はないし、後々やっかいなトラブルに巻き込まれる可能性があります。

Q となると、母親の代わりになってくれる人を見つける必要がある!?

A そうですね。判断能力の程度(痴呆)にもよるが、例えば「後見人」という者をたてて、その後見人に遺産分割協議に加わってもらう必要があるでしょうね。

Q 今回のケースだと、相談者か弟さんが後見人になるように、裁判所に相談すればいいのですね?

A そこには、一ひねりあります。一般的には、お子さんや親族が後見人になって、高齢の親を日常的にケアをする事が多いと思いますが、今回は、父親の遺産を巡る遺産分割協議というのを控えているわけです。

Q どういうことですか?

A 遺産分割協議におけるご相談者と弟さんとお母さんは、あくまでも各々が対等に自分の権利を主張しあえる立場になければイケマセン。「自分はもっと多く財産を受け取れるはずだ!あなたの取り分は少ないはずだ!」などとね。そういうときに、母親の後見人がご相談者ご自身だったらどうなります?

Q ご相談者は、相続人である子としての立場でありながら、相続人である母親の代理人としての立場でもあることになります。

A その通りです。1人の人間だけど、二つの立場で話をしなければいけなくなり、お互いが多くの財産をもらいたいという場面で衝突する可能性があるのです。相続人のうちの1人に多く財産が行くということは、別の相続人の取り分は少なくなるわけですから。これを利益相反問題と言います。

そのため、母親の代わりをしてくれる人として、弁護士などの第三者を立てる必要が出てくるんですね。

 

文責 弁護士 和田拓郎

 

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