【ご相談内容】
今日は、新聞やニュースでも多く取り上げられるようになったLGBTに関する裁判のお話をしていただきたいと思います。先週には、LGBTに関する法律が制定されたと言うニュースもありましたね!?。
A はい、先週末にLGBT理解増進法案(性的思考及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律)が成立しました。今日はその法律そのものの話ではありません。
実は、6月16日、性の不一致を巡る一つの裁判が最高裁で審理され、7月中旬に最高裁としての判断が出される予定となりました。性の不一致とトイレ使用問題或いは使用制限問題に関する裁判です。
Q どういった内容に関する裁判ですか?
A 原告は経済産業省の職員、被告は国(経産省だったり人事院を念頭)。原告は、いわゆる身体的性別、生まれたときに決定される性別は男性。戸籍上も男性。だけど、性同一性障害(トランスジェンダー)に悩み、自認する性別は女性という方。となると、その方が職場のトイレを利用するにあたり、女性トイレの利用はどこまで認められるのか、或いは、職場としてはどこまで認めるべきかが大きな争点となりました。そして、その当時の経産省の取った対応はマズイのでは?国家賠償責任レベルでは?という問題が生じているものです。
Q 経済産業省はどのような対応取ったのでしょうか?
A きっかけは平成22年頃の話にさかのぼります。職場である経産省としては、原告のヒアリング、原告に同席してもらった上での職場説明会(性同一性傷害についての理解を求めるためのもの)、職場同僚からのヒアリングなどを経て、その原告が所属する部署の属する階(例:30階ビルの10階だとして)及びその上上下1階(9階と11階)の女性トイレの使用は認めず、それ以外の階の女性トイレの使用を認める対応を取りました。で、その後も引き続き原告とのヒアリング自体は継続し、原告への一応のフォローはしていたが、そのトイレ利用制限の運用自体は少なくとも平成26頃まで4年間変わらなかった。これは怠慢だろう、と言う問題提起です。
Q で、この問題について、7月に最高裁の判断がでる、ということですね?
A 地裁も高裁も、性別はその人の人格に関わる大事な要素であって、その人が真に認識(自認する)性別に即して日常生活を送ることは非常に重要な法的利益だという点で出発点は一緒です。要するに単に好みだとか、特徴だとか、少々社会生活上困難があっても法的に救済されない、とは言っていません。むしろ、救済の対象となるという社会的共通認識はあるだろうということです。
で、22年から26年間の少なくとも4年間、女性トイレの一部使用制限を続けたことが怠慢か怠慢でないか。。。地裁は怠慢。高裁は怠慢とまではいえない、としました。
Q 地裁と高裁と判断が分かれた理由は何でしょうか?
A 経済産業省がそのような制限を設けたことの理由は、男性は男性トイレ・女性は女性トイレを使うという、従前からあまり意識されずにきたトイレの利用方法を今回のケースをきっかけに変更を加えることで職場内に大きな混乱が生じる可能性がある、という点でした。
地裁は、職場として、懸念を抱くこと自体は一応理解出来るが、その当時の民間企業の取り組み、海外での取り組みを参考にすれば、国としては大げさに心配する必要は無いんじゃない?という考え方でした。心配しすぎて対応に遅れを生じさせた以上、違法なんじゃない??という判断でした。
他方、高裁の考え方は、職場は、性の同一性に悩む原告のそのほかの要望は可能な限りくみ取ってきた、職場環境全体の事を考えて調整を図ってきた、女性トイレの使用似関する要望も上下1階の利用を我慢して貰うだけでそれ以外の階の利用を認めているわけだしトイレの利用時間の制限なども設けていないよね、と。国の対応は、違法とまでは言えないんじゃない??という判断でした。