遺産分割の前哨戦!?

【ご相談内容】

相続についてです。私の実家は父名義だったのですが、いつの間にか、父の生前中に父の面倒を見ていた兄が売却していました。当然、揉めてます。しかも、売却代金が父のどの口座にも入金されていません。おそらく兄が持っているのだろうと思います。相続人は私と兄だけですが、「お金の2分の1をくれ」というには、遺産分割協議をするしかないのでしょうか?

Q 父の不動産を、自分の知らないところで売っていた。そのお金は兄が管理していると思うが、どうすればその2分の1を支払ってもらえるか?というご相談です。

A もちろん、遺産分割協議とか難しい言葉抜きに、お兄さんと話し合って解決できるのが一番良い。

  ただ、そもそも実家を勝手に売却していたとなると、感情的な不信感は捨てられないですよね。

Q そうなった場合、法的手続きですか?

A 調停とか訴訟などの法的手続きでしょうね。ただ、今回の場合、厳密にいえば、いわゆる「相続」「遺産分割」という耳慣れたジャンルからは外れてしまいます。

Q 父名義の不動産を売却したお金を相続人同志で分けるんですよね?それでも「遺産分割」ではない、と?

A ①生前の不動産売却代金が父名義の口座に残されていたのであれば、父名義の預金口座残高を分けるわけですから、その場合は父の「遺産の分割」になります。

  ②しかし、今回、あくまで兄が保有している(だろう)。の遺産の中には含まれていないわけです。この場合は、不当利得返還請求という形をとります。

Q 不当利得返還(ふとうりとくへんかん)請求?

A お父さんの生前、売却したお金が父のもとに入らずに兄が持っていたとなると、法律上、生前の父は兄に対して、その金を返してくれ(俺の土地を売ったお金だ。だからその金は俺のものだ)と言える。お金返せと請求する権利を持っていたわけです。今回、この金返せと請求する権利が父の遺産の一つとなり、それ自体が相続の対象となる。

Q となると、ご相談者は、その「【お金を返せ】という権利」を相続することになる、ということですか?

A そう。相続人は2人ですから、厳密にはその2分の1。つまり1000万円で売却していたとなれば、生前の父は1000万円返せと言えた。となるとご相談者は500万円返せということになるのです。1000万円全部を兄が保有する理由はないだろう!という理屈で。これが不当利得返還請求。要するに、正当な理由もないのに、500万円を超えた金額を持っているね、それは返せ、ということです。

法的手続を使うか不動産会社に相談するか、いずれにしろ売買契約書の入手はしたいところですね。そこに売却金やその振込先口座も出てくるだろうから。

結論、兄から半分を返してもらうためには、遺産分割という方法ではなく、不当利得返還請求という方法による必要がある、ということです。

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