【ご相談内容】
親が亡くなり、相続人は私と兄の2人だけです。その兄から、遺産分割協議書が送られてきました。書かれていたのは、【生前、親が住んでいた自宅の名義を兄にする】という内容でした。私は、いままでずっと親兄弟とほとんど音信不通でしたので、相続自体に一切興味がなく、兄名義になっても構いません。ただ、問題なのは、その実家のことしか書かれていないということです。預貯金は少しはあったでしょうし、保険なども掛けていたかもしれません。しかしその記載が無いのです。そういう遺産分割協議書でもサインしてよいのでしょうか??
Q 兄から送られてきた遺産分割協議書に自宅のことしか書かれていない。預貯金等が記載されていない。それでも良いのか?というご相談です。
A ご相談者はそもそも何も相続しなくて良いというお考えのようですから、そのままサインをしてもらって構いません。仮に、実家の不動産には興味が無いけどそれ以外については相続を考えるというのであれば、ちょっと考えたほうが良いでしょうね。ただ、今回のご相談者のケースはサインして良いでしょう。
Q 実家の不動産のことしか触れられていないけど大丈夫か?という点はどうですか?
A おそらくは、遺産分割協議書には親の遺産全てを記載しないといけないのではないか?銀行口座の1つくらいはあるだろうからその記載が無いのは不備なのではないか?という疑問が念頭におありでしょうが、問題はありません。
遺産分割協議というものは、相続人間の合意のもとに成り立ちさえすればよく、特段、ルールというのが無いんです。やり方とか順番とかにルールがないんです。期限とかも。
Q 何年のうちに遺産分割協議をしなければならないというルールもない?
A そう。だからこそ所有者不明土地問題などがでてきたので、今年の4月には相続登記が義務化された。ただし、それは遺産に不動産がある場合にタイムリミットを設けただけであって、不動産がない場合には関係が無い。やはりタイムリミットはない。
そもそもこうしなければならないという決まりが無いので、じゃぁとりあえず土地の問題だけ相続人間で決めちゃいましょう。つまり遺産分割協議書に土地のことしか触れていない、ということも別に問題ではないのです。
遺産が不動産、預金、株など多岐に亘る場合には協議自体が難航します。
Q なるほど、そういう場合には、とりあえず不動産だけ決めましょう、というのは1つの方法としてアリですね?
A 逆の視点から言えば、遺産分割協議は、1度のタイミングで、全ての財産について、相続人間で合意が成立しなければならない、というルールはない、ということです。全ての財産についての合意ができない以上は遺産分割協議とは言わない、というわけではないのです。
何度でもトライすることは出来ますし、遺産が多岐にわたるような場合には、今回はこの財産だけについて協議し合意形成を目指す、というのは、ある意味合理的な方法だったりするわけです。
今回のケース、お兄さんがまずは不動産、次は預金と考えているかもしれません。ただ、ご相談者は相続をする気がないようですので、何も気にせずサインをしてもらって大丈夫です。