今年7月、最高裁判所は、親権者と面会交流の関係が重要な争点となった訴訟において、夫側の請求を棄却しました。昨年、とある地方裁判所で“親権者を夫(父)”とする判決が出て話題になりましたが、高等裁判所はその結論を覆し、最終的に“親権者は妻(母)”ということが確定したのです。
なぜ話題になったのかというと、小学2年生の女の子の親権者争いに関して、夫側は、“自分こそが親権者にふさわしい”という主張を展開する際に、相手方(妻)に対して提案した【娘との面会交流条件】が目を見張る内容なのです。
一部を挙げますと、妻は、娘と① 毎月2回、週末の2連休を一緒に過ごして良い、② 妻の誕生日や年末の7日間を一緒に過ごして良い。③ 夏休み期間中も14日間、一緒に過ごして良い・・・etc。 結局、“ 年間100日間くらい会っても良い ! ” という内容でした。
私が代理人として経験した限り、夫婦の一方が離婚後の親権を勝ち取ったとしても、そもそも宿泊を伴う面会交流を快諾するようなケースは稀です。
地方裁判所は、このような夫側の、相手(妻)に寛大ともとれる面会交流条件を提案したことを評価し、夫を親権者としました。
しかし、この結論は覆されました。
“ 面会交流条件は、親権者を決める際の一判断材料であって、親権者を決めるための決め手ではない ”ということが根拠です。
確かに、一見すると、夫が提案した面会交流条件は、かなりの好条件に受け取れます。しかし、このように頻繁に妻と娘が会えるということは、裏返せば、妻も娘もその条件を守らなきゃいけないというプレッシャーに陥りそうです。
妻の仕事の都合は? 頻繁に父と母の間を行ったり来たりする娘の体力的・精神的疲労は?? そもそも娘の都合は ( 小学生ともなると、学校行事が忙しかったり、友達と遊ぶ方が楽しいのでは ) ???・・・。そういう疑問が生じるのです。
女の子の身の回りの世話は、殆どの期間を通じて妻が行っており、別居後も妻と生活して健康的に暮らしていました。このような事情も含めて考察した結果、結論が覆りました。
面会交流を全く拒絶すると親権者変更という事態を招くこともありうるわけですが、かといって、お子さんにとってあまり現実的でない面会交流を提案するのも問題があるようです。
文責 弁護士 和田拓郎