無視しちゃいけない支払督促

【ご相談内容】

先日、裁判所から「支払督促」という書類が届きました。びっくりしたのですが、クレジットカードの未払滞納分が請求されてきたのです。よく読んでみると、“2週間以内に異議を申立てないと、仮執行の宣言をする”というよくわからない言葉が出てきました。異議を出すとはどういう意味でしょうか?異議を出さなければどうなるのでしょうか?

Q 「支払督促」という言葉が出てきましたね?

A 契約当事者間にお金のトラブル問題があるときに、当事者の一方である債権者はそのお金をどうやって回収しますか?という話をする時、このラジオ内で、私が「裁判するしかないでしょうね」と話すことがあります。これは、大抵、調停手続や訴訟手続をイメージして発言しているのですが、それ以外にも裁判所の手続を利用して債権回収を図る方法があるんです。その一つが支払督促という手続です。

Q どういうものなのですか?

A 債務者に対して、‟お金を払って下さい”という請求を裁判所を経由してするという意味では調停や訴訟と一緒です。支払督促手続に特徴的な点を2つ。まず1点目は、債権者が初期段階からわざわざ証拠を準備しておかなくてよい点。訴訟とか調停の場合、債権者はある程度証拠を準備し、裁判所に提出する必要があるのですが、そこまでしなくて良いんです。その意味で、とにかく簡単な手続なんです。

Q 債権者側としては有難いですね。で、ご相談の【異議を出さなければどうなるのか?】という点はどうですか?

A まず、①異議とは何か?の問題ですが、これは、その債務について心当たりがあるのかないのか、心当たりがあるとしてどういう形で支払っていくつもりか、ということを表明することを言います。そして、②裁判所からの通知が来て2週間以内に異議を出さなければ仮執行の宣言をする…という問題ですが、これは、‟あなたの財産が差し押えられる可能性が迫っていますよ”ということを意味します。2週間何もしないでいたら、つまり異議を出さなければ、債権者側は更に手続を踏んで、あなたの財産を差し押えることができます、ということを言ってるのです。

Q 裁判所からの通知をそのまま放ったらかしにしていると、恐ろしい結果になると言うことですね?

A そうです。訴訟手続を利用する場合、債権者による差押え現実的に可能となる時期が来るまでには、最短でも1ヶ月半くらい時間がかかります。他方、支払督促手続の場合、その書類を債務者が受け取ってから23週間で、差押え話が現実味を帯びることになるのです。これが2点目の特徴です。

Q となると、債務者としては、当然、異議を出しておかなければならないわけですね?

A そう。今回、クレジットカードの未払滞納分の請求だったということで、その請求に心当たりがある以上、大きな問題とはならないでしょうが、仮に心当たりのない請求であったとしても、異議は出す。無視はしないようにしましょう。10年近く前の話ですが、オレオレ詐欺が流行る前には架空請求詐欺というのが流行りました。例えば、身に覚えのないアダルト関連サービスの請求です。で、都会のほうでは、この支払督促を利用した架空請求が流行った時期があったんです。

一般に、架空請求に対する対処法は、‟身に覚えがない以上、その請求は無視していいよ。あえて業者と連絡を取る必要はないよ”というのが相場なのですが、この支払督促を利用した(架空)請求の場合、先ほど申し上げたように、無視をしてしまっては差押え受ける危険性があるんです。

文責 弁護士 和田拓郎

 

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