【労災隠し】と疑われないためにも・・・

【ご相談内容】

仕事で作業をしている最中にケガをしました。会社の社長が、「とりあえず健康保険証を病院に見せて、健康保険を使ってくれ」と言われました。これって「労災」だと思うので、社長の対応には非常に不満です。法的におかしくないのでしょうか?

Q ひとまず、【労災】って何ですか?

A 勤務中にケガをしてしまった場合、これを【労働災害】といいます。“ 国が、その負傷者に対して、病院の治療費や収入補償その他のお見舞い金を負担します ” という保険制度を指す場合もあります。

Q ご相談者の雇い主は「健康保険を使ってくれ」と言ったそうですが、これはどういうことですか?

A 【労災保険】を使えば、一般的には、通院当初から又は最終的に、従業員の負担はゼロになります。しかし、ご自身の【健康保険】を使うということは、治療費の一部を自己負担しなければなりません。【労災保険】なら無料のハズが、【健康保険】のため自腹を切らなきゃイケナイということです。

Q であれば【労災保険】を使わせなかった雇い主の対応はマズイのでは?

A まず知ってもらいたい点は、この【労災】に該当するか否かを誰が判断するのか?という点です。その認定者は労働基準監督署です。雇い主でも、ケガをした従業員でも、病院の担当医でもありません。

そうなると、事故直後、雇い主が、その事故が直ちに【労災】にあたるかどうかの判断に迷うケースはありますし、従業員に早急に病院で治療してもらいたいという配慮から “ とりあえず健康保険証を提示してくれ ” と従業員にお願いするケースもあるでしょう。

こういう場面が想定される限り、「とりあえず健康保険を使ってくれ」という指示自体は、必ずしも一律にマズイとは言い切れないのです。

Q となると、気になってくるのは、その後の雇い主の対応ですね?。

A おっしゃるとおり。ケガをした従業員は、早急に、病院経由又は会社経由で、労災補償に関する申請書を労基署に提出しなければなりません。そうすることで、今後の治療費がタダになったり、既に払ってしまったお金を返して貰えるんですね。その申請の際には、“この従業員の負ったケガは労災が原因ですよ”ということを証明する意味の雇い主のサインが必要になります。

雇い主がこの労災事故証明に協力しない場合、結論的に、雇い主の対応がブラックとなる可能性がでてきます。雇い主は、時に、従業員に対し、「病院で、『労災です』と言ってきなさい!」とアドバイスする潔さも必要でしょうね。

文責 弁護士 和田拓郎

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