【ご相談内容】
貸したお金の請求の仕方についての相談です。10年ほど前に、知人に150万円を貸しました。借用証もあります。分割払いの約束はしたわけではありませんが、少しずつ返済をしてくれてました。しかし途中から返済が滞りました。
というより、滞っていました。今まで私がそのことをすっかり忘れており、最近になって気づいたのです。連絡をすると、どうやら相手は介護施設に入っているようです。でも請求しても大丈夫ですよね??
Q 10年ほど前の出来事。お金の貸し借りで、最近になって、まだ全部返してもらっていないことに気づいた。どうやら介護施設にいるようだが、返してくれと言ってもよいか??というご相談です。
A まずは何よりもその契約書の中身の確認が重要ですね。” 貸した相手が施設に入っている ” 点を気にされているのであれば、それは極端に言えば、当時と現在とでは住んでいる場所が違うというだけの話ですから、現在の住所に請求書を出すのは構わない。ただ、” 施設に入っている ” ということだから、様々な状況や事情で返済が難しいという返事が来る可能性があることは最初から予期していたほうが良いでしょう。これはあくまで事実上の話ですね。問題は法律上の話です。
Q 法律上は何か問題がありますか?
A 契約書の中身と過去の返済実績の話になるのですが、いわゆる時効の問題です。
Q あ“~、10年前の話だから???
A そうです。個人間のお金の貸し借りは時効は10年というのがあります。数年前に民法が改正されて現在、” 時効は、原則 5年だ ” ということになったのですが、ご相談のケースは、だいぶ昔のお話ですので改正前の民法ルールがあてはまる。つまり10年。
で、貸したのはいつですか? 返済が止まったのはいつですか? それって10年以内の話ですか? それとも10年以上前の話ですか? という点が気になるわけです。
で、貸したのは勿論、返済が止まったのも10年以上前だということになると、借りた側からの、” 時効ですね、返済する必要はないですね ” という理屈が成り立つことになる。
Q そうなると請求はできないということになるのですね?
A 実はちがう。請求それ自体はできちゃうんです。明らかに時効期間の10年が経過していても、返済されていないのであれば、請求自体はできちゃう。
ご経験ある方もいるかもしれませんが、ある時、いきなり金融業者から請求書・通知書が来て、「確かにあの時借りた、確かに返済は終わっていないかもしれない。でも、それっていつの話だよ!」というケースがよくあるんですね。
ただ、金融業者の請求自体が違法ということではない。適法なんです。なので借りた側が「それって時効ですよぉ!」とキチンと意思表示をして、そこでようやく初めて一件落着なんですね。
ですので、今回のご相談の場合、ご相談者は債権者サイドになるわけですから、契約書の中身の再チェックは勿論、法律上の問題として時効ですよという反応が来る可能性、事実上の問題として返済不可という返事が来る可能性を予想しておかれたほうがよろしいですね。