【ご相談内容】
中学校で教員をしています。前回の放送で、教育現場での著作権の利用の話をされていました。教育活動の場での著作物利用は一般的に許容されるといったお話の中で、教育活動の場というのを【先生と生徒が向き合ってコミュニケーションをとる場面】をイメージすると良いというお話でした。その中には、いわゆる【国語算数理科社会…といった授業】が入るとは思うのですが、教室を出て、学校外での課外活動や修学旅行といったものでも大丈夫でしょうか?
Q 教育の現場では著作物の利用が比較的許容されているというお話ですが、その「教育の現場」って何か?というご質問です。教室での授業のこと??というご質問ですね。
A 前回のご質問は、PTA活動としての著作物の利用、保護者のボランティア活動における著作物の利用が問題となっていましたから、誰がその著作物を利用するのか?という問題意識に基づく限り、教師が生徒に対して著作物の利用をする場合は一般的に許容されやすい、という話でした。今回のご質問は、まさに教員ということで教師対生徒の場面ですから、じゃぁ、次のステップとして、「教育活動の場」というのはいったいどこまで広がるの?というご質問になろうかと思います。
で、結論からすると、無茶苦茶ひろい。
Q では、学校外での課外活動や修学旅行なども「教育活動」と捉えてよいわけですね?
A うん。なんなら運動会や文化祭も入ります。社会で活躍する卒業生OBを招いた講演会などの学校行事も入ります。これは著作権法35条の「授業の過程における利用」の話。この35条があるおかげで、教育活動場面での著作物利用は比較的許容されるという恩恵を受けることになる。
ネット上で【文化庁 35条】で検索しますと【改正著作権法35条運用指針】という資料が出てきます。
その授業の例の一つとして「初等中等教育の特別活動(学級活動・ホームルーム活動、クラブ活動、児童・生徒会活動、学校行事、その他)や部活動、課外補習授業等」という挙げられてるんですね。
Q 教育活動とはずいぶん広い場面を指すのですね?
A あくまで、学校その他の教育機関が実施する場面を念頭にしていますので、いわゆる予備校や塾は、たしかに勉強する目的の施設ではありますが、これは対象外。少なくとも35条の恩恵は受けない。
例えばの話ですが・・・。
中学校の運動会で、生徒さんたちが有名な流行曲に合わせてダンスを披露したりしますよね?実は、これは著作権法上の、先ほどの35条と前回の話にも出た非営利目的での利用を許容する38条の合わせ技によって実現します。まず、音源となる楽曲を、通常、音楽配信サイトからダウンロードしたり、CDからSDカードなどの記録媒体に保存したりして、実際に当日再生するわけですが、ダウンロードや保存は複製権を認める35条、再生は演奏権を認める38条の合わせ技です。
中学校の文化祭ともなると、パンフレットにはマンガなどのキャラクターがたくさん印刷されていたり、似せて描いたポスターがずらっと張られていたりすることがありますが、これも35条で複製が認められているからです。