関心のある方も多いと思いますが、今回は、8月26日に出た判決について解説して貰おうと思います。《テレビを視聴できるワンセグ機能付き携帯電話を所持しただけでは、NHKと受信契約を結ぶ義務はない-。埼玉県朝霞市議の男性がそう訴えていた訴訟の判決で、さいたま地裁(大野和明裁判長)は8月26日、『契約義務はない』とする判断を示した》(平成28年9月19日産経ニュース)
Q ワンセグ機能の付いた携帯をお持ちの方も多いでしょうね。ガラケーの時代からありましたもんね?
A この判決を受けて、NHKは直ちに控訴すると公式に表明しています。今回の裁判の争われ方は、【ワンセグ機能付きの携帯電話】について、受信料が発生するか?ということでした。ただ、厳密に言えば、ワンセグという一つの放送形態に着目した話ですから、広く【ワンセグ機能付きのモノ】が受信料の対象(受信契約の対象)になるか?ということなので、理論的には、ワンセグ機能付きのカーナビ単体とか、そもそもテレビを見ることのできる自動車、これらも受信料が発生するのか?という問題にも繋がることを意味します。
Q そもそも「ワンセグ」って、どういうことでしょうか?
A 各放送局に割り当てられた周波数領域(一つの “ 幅 ” )がありまして、それを13に分割します。分割された一単位を「セグメント」というのですが、そのうちの1つのセグメントを取上げて、これを移動中にも放送を受信できる場面のために割り当てることにしたので、「ワンセグ」というらしいですね。
Q 法律的にはどのような問題があったのですか?
A 放送法というのがあって、これは公共放送機関・民間放送機関を問わず、遵守すべき法律なのですが、ことNHKとの関係で、視聴者はどのような場合に受信契約をしなければならないのか(受信料が発生するのか)ということが書かれてあります。そして、NHKと受信契約をすべき場合とは「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した」場合と規定されているんですね。そこで、ワンセグ機能付き携帯を所有している人は「設置」したことになるのか?という形で争われたのです。
Q 普段から携帯電話を肌身離さず持ち歩いているとは言っても、それを「設置する」という表現はちょっと違和感がありますね?
A 実際の判決文では、昭和20年代に制定された放送法の改正経緯や、他の法律ではどのような場面を念頭に「設置」という言葉を使っているのか、受信料は税金と言えるかなどといった難しい内容に踏み込んでいるんですが、端的に言えば、放送法という一つの法律の中に、放送法成立当初から盛り込まれていた「設置」という言葉の他に「携帯」という言葉も出てくるのです。正確には、地デジ終了前後の平成22年頃、つまり最近になって「携帯」という言葉が盛り込まれた条文ができたんです。
Q じゃぁ、「設置」と「携帯」は同じ意味なのか?それとも別の意味なのか?という話になるわけですね?
A そうです。「携帯」=「設置」であるならば、理論的に「受信設備を設置した場合」に含まれることになるから受信契約の対象となりますね。ただ、このような表現こそ裁判所は使っていませんが、“ 日常感覚上、移動中に電話を「携帯する」とは言えるとしても、「設置する」とは言わんでしょ。” “ 受信料を徴収するというスタンスをとり続けるのであれば、「設置」と「携帯」の関連性は明確にすべだよね ” という観点から、ワンセグ付き携帯電話は受信契約の対象ではないとしました。ただし、地裁判決ですので、今後、結論が変わる可能性もゼロではありません。
で、ちょっと議論をややこしくしているのが、総務省の存在です。受信契約のあり方については、総務省の認可が必要なんですね。だから、この問題は、厳密には、視聴者である国民と、NHKと、総務省という3つの立場があるんです。