自分だけの問題にとどまらない賃借人の責任

【ご相談内容】

私は賃貸マンションの大家です。とある方が退去されて、室内清掃をしようとしたところ、備え付けの建具が破損され、取り外されたままになっていました。“ さすがに責任をとってもらおう ”ということで、住んでいた人に確認をとったのですが、“その件なら、以前一緒に住んだことのある 同棲相手ががいつの間にか壊したようだ ”と、まるで他人事の対応。カチン!ときました。元借主に責任とって貰うことは可能ですよね?

Q 「建具」ということですから、襖とか扉が壊れてたんでしょうね?

A おそらくはね。そういう前提で話をします。誰に責任を取って貰うかを考える前に、ひとまず契約書を見てみましょう。

Q それはなぜですか?

A 特約があるかもしれないからです。つまり、≪ 襖とか畳とかは借主負担で入替える ≫なんて特約は多いですね。もしその特約でカバーできるのであれば、つまり特約に記載されている「建具」が問題となっているのであれば、誰が壊そうがあまり重要ではなく、借主に責任を取って貰えば良いわけです。今回の問題に限らず、まずは契約書を見返してみるというクセを付けたいですね。

Q では、もしその特約でカバーできない建具が壊されていたらどうですか?

A これも契約書上、通常であれば、≪ 賃借物を破損した場合は、借主は損害賠償の責任を負う ≫というような条項があるはずです。この条項に基づいて借主に責任を取ってもらえばよいわけですね。

Q でも、今回の借主は「同棲相手がやったことだから、自分に責任はない!」という考えのようですが?

A 法律の世界では、‟  他人の行為であったとしてもそれをあたかも自分( 借主 )の行為だ  ”と評価して、つまり他人と自分とを一体視させて、本来であれば他人が負わなければならない責任を本人に転嫁させることが正当化される場合があるんです。現在の日本の法律は個人主義の考え方に基づいてますから、トラブルの責任の取り方についても個人責任、自己責任が原則です。それを、法律の条文に頼らずして、いわば連帯責任を認める理論があるというわけです。

今回、同棲相手はその借主と一緒になって一定期間その部屋に住んでいたのでしょうから、同棲相手のうっかりミスは、借主自身のうっかりミスと評価して、借主自身に責任追及をしていくことが可能になるわけです。

住んでいたのがファミリーだったらわかりやすいですね。例えば、子どもが窓や壁を壊したとして、借主である父親が、「壊したのは私じゃない。子供がやったことだ 」と言ってきたとします。大家さん側はその話をホイホイとまともに受けて、子どもを直接の相手にして責任追及しますか?・・・しないでしょう・・・という話です。

文責 弁護士 和田 拓郎

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