【ご相談内容】
ある会社に務めてから間もなくしてその会社を辞める時に、上司から、「今まで、君のスキルアップのために、会社は、いろいろな研修や教育費を払ってきているのは知っているだろう。それを生かさないまま、すぐに会社を辞めるというのなら、この費用を返して欲しい」と言われました。研修などにかかった費用は返さないとイケナイのでしょうか?
A 今回のご相談は、詳細な事情がないとナカナカ回答が難しいですね。事前に会社との間でどのような取り決め(合意)があったのかどうかという点、その研修費や教育費というのはどういう内容の費用であったのかという点によっては、費用の返還義務があったりなかったりするということです。
Q 返さないとイケナイとなると、事実上、会社を辞めづらくなりますよね?となると、前回のお話にも出た「職業選択の自由」を制限するようにも思えますが・・
A そうですね。原則論として、会社側は、従業員がその会社を辞めるにあたって、その後の自由な職業活動を制限するような会社側の対応があってはダメ。“ 費用を返せ”となると従業員にとって、会社を辞めにくいというプレッシャーを与えることになってしまいます。となれば、費用の返還義務無しとも言えそうですが、実際は、そうではありません。
Q 何が決め手になりますか?
A 当たり前といえば当たり前の話なのですが、一番最大の決め手は、その研修や教育が、会社側の人材育成制度に組み込まれたモノなのか、それとも従業員本人が自ら見つけ出してきて受講を希望したいと言い出したものなのかです。
Q その研修や教育の機会を、会社側が準備したモノなのか、それとも自分が準備したモノなのか?ということですね?
A そうです。今回のご相談内容に対して、トートロジー的な回答で申し訳ないのですが、本来的に会社においてその費用を負担すべき研修等なのか、それとも従業員自らが負担すべき研修等なのかという視点でもあります。
例えば、従業員を採用して新人従業員教育をする場合が典型です。この場合、会社としては、その新人さんを、その会社にとって有用な企業人として鍛えていかなければならないわけですから、当然、それにかかる費用は会社負担になります。また、会社の業務命令で、「一定の資格を取りなさい」なんて場合も会社負担ですね。
それに対して、従業員が、“ 自己研鑽するために、ある一定の資格を取りたい、一定の研修を受けたい、だけど今手持ちのお金がない!” という場合に、その研修にかかる初期費用等を会社が支払ってくれることもありますが、これは本来は従業員の側で負担すべきものですから、それはやはり返還をしなければイケナイという方向に進むでしょう。そうなると、あとは、会社と従業員との間で、“ かかった費用についてどのように返済するか或いは返済しなくても済むか ” という点について取り決めをするはずですから、それに従った対応をするだけのことなのです。