抜駆けは許しませんよ!?~特別受益(相続)~

【ご相談内容】

父が高齢となり老い先も短いので、父の許可を得て、さっさと父名義の不動産を自分の名義にしておきたいと思います。父も、「名義を変えても構わない」と言ってくれているからです。ただ、気になるのは、この後、相続で揉めないか???ということなのですが、気をつけておかなければイケナイことがあったら教えてください。

Q 土地や建物の名義を変更しておく際に気をつけることには、どんなことがありますか?

A まずは税金ですね。父親が亡くなる前の名義変更なら贈与税、亡くなった後なら相続税が課税される可能性を考えておかなければいけません。名義変更をしようとする財産の価格、それ以外の財産価格との兼ね合い、課税の前提としての基礎控除額などによって、より税金のかからない方法を選ぶことです。そして、実際に税金がかかるとした場合には、その税金をどうやって支払うか(原資)という点も検討しておく必要があります。

Q お父様が、“早めに名義変更して良いよ”と言ってくれている場合、何か気をつけておくことはありますか?

A 他の相続人の意向でしょうね。他の相続人も、「その方向で話を進めてもイイよ」と言ってくれるのなら問題はありませんが、一部の相続人があまりイイ顔をしない場合には、お父様の死後、遺産分割協議をする必要が出てくるかもしれません。

Q 遺産分割協議とは、亡くなった人の財産をどのように分けるかということについて、遺された相続人たちで話し合うことですよね?

A お父様の生前から、ほかの相続人たちも、“さっさと名義変えてもイイよ”という点に賛同してくれるような場合、事実上は、既に遺産分割協議も済ませたようなもんでしょうね。しかし、イイ顔をしない相続人がいれば、本当の意味で、法律上の遺産分割協議をしなければいけなくなる可能性が出てきます。

Q それって、“ 父の財産を、ご相談者自身の名義に変更をしたことは認めないよ!”ってことですよね?

A というよりは、“ お前、その分だけ、親父からたくさんの財産をもらいすぎたことになるのだから、少しは取り分を他の相続人によこしなさい”という反論がくる。特別受益という問題。

Q せっかく、お父さんが “ご相談者の名義に変更してもイイよ”と言ってくれていたのにですか?

A そうです。だから、生前贈与の際は、財産を贈与しようとする人の意思確認はもちろん大事ですが、それに加えて、将来相続人になる人達の意向も事前に確認しておくのが重要なんですね。特に、普段は付き合いのない親族(将来の相続人)の意向を忘れてはイケません。思わぬ所でしっぺ返しをもらう可能性があるんです。

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