【ご相談内容】
さて、今日は、リスナーの皆さんから頂いたFAX内容ではなくて、遺言書にまつわる興味深いお話をしていただくとのことですが、どんなお話ですか?
A 先日、平成27年11月20日に遺言書の書き方について、最高裁判所が興味深い判断をしたのでそれを紹介したいと思います。
親が書き残した遺言について、その相続人である長男と長女との間で、遺言書として有効か無効かが争われた事案です。その遺言書には、“ 親の財産を全て長男にあげる ” と書かれていたんですね。
Q 相続人の一方当事者である長女としては、イイ気がしないケースだってありますよね?
A そうでしょうね。ただ、その遺言書の書き方に注目してほしいのですが、“ 長男に全財産をあげる ” とは書かれていたのですが、その文字の上から、赤ボールペンで、斜めに大きく斜線が引かれていた。
そこで、長女は、“ (赤の斜線が入った書面なんて)遺言書としては意味が無いことの表れである ” ということで、遺言書の無効を主張したのです。
Q 常識的には、赤で斜線引いていたら、” この遺言書は無意味だよ ”と言えそうですが。
A そうですね。結論的に、最高裁は、皆さんが思われるその一般常識に従って、遺言書は無効と判断しました。遺言書全体に斜線が引っ張られている以上、そこに記載された中身は全て否定すべきだろう、ということで。
Q では、なぜ、兄弟間で争われたのでしょう?
A 簡単な話です。この遺言書は金庫の中に現存した・・・。そこがポイント。ただ単に、赤の斜線が引っ張られているだけ・・・。もし、パソコンを使わずに、手書きで、重要な書類や大切な手紙を書く場合に、書き損じたり、内容を修正したい場合には、どうしますか?
Q さっさと破り捨てて新しく作り直すか、間違った箇所のみを修正します。全部を修正しなきゃならないレベルなら、やっぱりさっさと破棄して、作り直すと思います。
A そうですよね。もし、この遺言書が本当に無意味なら、とても重要な書面なのだから、破り捨てれば良いじゃない!わざわざ金庫に残しておく必要はないじゃない!?という素朴な疑問は解消されない。
だからこそ、長男(財産を譲るとされた側)は、この遺言書はあくまで有効だ!ということで争った。
Q 結論として、赤の斜線を引いた場合には遺言書が無効だということですが、なぜ捨てなかったのか?というところはわからずじまいですね?
A 遺言書を書く際の取り扱いには十分気を付けましょうね・・・というお話でした。