【ご相談内容】
亡くなった父が、鹿児島市内にわずかな土地とお金を遺して他界しました。子供達の間で、この土地とお金をどうするか話し合っています。正直なところ、“ その土地は要らないけど、お金は少しでも欲しい。でも、色々と揉めたくない ”というのが本音です。“ 土地については相続放棄するけど、お金は法律に従った分だけ相続する ”というのは可能でしょうか?
Q 土地は相続しないけど、お金は相続する。「相続放棄」のご相談ですね?
A 「相続放棄」という言葉をご存知の方が増えてきているのは事実です。ただ注意してもらいたいのは、「相続放棄」の本当の意味。誤解が多いんです。
法律の世界で「相続放棄」というのは、父親の財産に関し、“ 全て ” 放棄すると言うことです。土地も家も預貯金もタンス預金も借金も、父親が持っている財産(資産も負債も)すべてについて、取り分がないということ。
Q “ コレ(土地)については放棄するが、アレ(お金)については相続分があるよ ” というのは法律的には、「相続放棄」ではないということですね?
A そうなんです。それは、これから遺産について話し合いをする上での、単なるその人の要望でしかありません。オマケにもう一点注意する必要があるのは、法律上の「相続放棄」とは、家庭裁判所に「相続放棄」に関する公的な届けをしておく必要があります。
Q 一般に、亡くなってから3ヶ月以内に裁判所に届け出るという話ですよね?
A そう。「私は、土地もお金も要らない」という内容を、他の兄弟に対して、口頭で話したり、一筆書いて差し出したというだけでは、法的には「相続放棄」ではないのです。それも、その人の要望でしかない。
Q ということは、今回のご相談に対する答えはどのようになるでしょうか?
A “ 土地は要らないがお金は欲しい。でも揉めたくない… ”と要望することの背景に、例えば、“ 他の兄弟と今後、相続問題で関わりたくない ”という気持ちがあるのであれば、法律上の「相続放棄」をするのも一つの手段だと思います。ただし、お金も受け取れない点には注意して下さい。
“ お金も欲しいなぁ ”という要望を少しでもかなえるためには、上手に話し合って遺産分割の話し合いをしてまとめ上げることが必要です。ご相談者のおっしゃった内容は、あくまで要望でしかありませんので、要望がとおるかどうかは別問題ですよ。
他の相続人からの誤解を受けないためにも、「相続放棄」の意味はしっかりと理解しておくのが良いですね。