【ご相談内容】
遺言書を書いておくのが、今、流行ってますね。私も遺言書を書こうと思い、「遺言書キット」なるものを購入しました。とはいっても、ダラダラと手書きで書くのが面倒ですし、もし間違ったら印鑑で訂正しなきゃイケナイし、ちょっと面倒です。パソコンで書いてそれをプリントアウトして、それに印鑑を押して封筒に入れて済ませたいです。それでも大丈夫ですか?
Q 今のご時世では、ご年配の方も、携帯電話のメールやパソコンを使う機会が多いですから、パソコンで文章を作れたら楽ですよね?法律的にそれでも大丈夫ですか?
A ずばりダメです。これから遺言書を準備しておこうという場合、作成する方法として、法律で定められた 3 つのパターンがあります。
①自分で遺言書をつくって、それそのまま書斎の机・金庫とかに保管しておくパターン、「遺言書キット」というのは、この場面でしょうね。
②巷でも有名なのが、公正証書遺言というものです。とにかく公証役場まで出かけて、希望する遺言の内容を公証人という立場の方にお話しして、その公証人に遺言書を作って貰うパターンです。
③最後が、今話しました①と②の2つのミックスパターンです。
Q 自分で遺言書を作るパターンの場合、パソコンで作ってはいけないのはなぜですか?
A 法律上、自署、つまり直筆しなきゃイケナイと決められているからです。遺言の内容だけではなくて、氏名、日付といった形式的な部分も含めて、全てを自分の手で書かなきゃならないのです。
Q じゃあ、例えばの話ですが《 1.土地は長男にあげる、2.貯金は長女にあげる 》というような遺言の内容自体はパソコンでバババァ~っと書いたけれども、最後の最後に、自分の名前だけは直筆のサインをしたというのもダメなのですか?
A ダメですね。
Q 遺言書を作るにもルールがあるわけですね? なぜ、全部の文章を自筆しなければならないのでしょうか?
A 書斎の中から出てきた遺言書が、本当に、本人の意思に基づく遺言であるのかどうか、本人が実際に作ったモノかどうか確認できないからです。
もしその遺言書がパソコンで作られた文章だった場合どういうことが起きますか?パソコンやワープロの文書は誰が書いても、誰がキーボードをたたいても同じ文字の形になりますね。本当に本人が作ったのか、他人が作ったのかどうかが確認できないんです。おまけに《この遺言書を作ったのはあなたですか?》って本人に確認しようにも、とっくに亡くなっているため、確認のしようが無いわけです。
Q たまにサスペンスドラマでも、遺産目当ての殺人犯人がそのようなトリックを使いますよね?
A そう。いかにも、相続財産のことを書いた遺言書を残して自殺したかのように見せかけて、実は、犯人が遺言書をパソコンで作成して、その辺に置いて逃げていくという展開ですね。法律的に言えば、そんな遺言書はあり得ないわけですね。