著作権に関する約2年前の判決なのですが、実務家としては、とある問題点(論点)をどう考えるべきかという意味で、“え!そうなるのか!”と興味が沸く判決でしたし、一般の人でも、子育て世代には“あ~アノ商品か!”と思われる方も結構いらっしゃる商品のお話です。
法律的感覚はさておくとして、「著作権」という言葉を聞くと、一般的には、映画とか音楽とか写真とか・・・のイメージがあると思います。先日も、とあるお笑い芸人が、有名な童謡「森のくまさん」の歌詞の内容を無断で変更したということで報道されていました。
ザックリ言えば文化系的な領域・芸術的な領域から生まれる作品に「著作権」というのがあるのではないか?と思ってしまいます。ただ、著作権というのは、コンピュータープログラミングにも認められるので、その意味では理工学的な雰囲気もあるのですが、それでもやっぱり、全体的には文化系のにおいがします。敢えてミスリード的に言うと、目で楽しむ、聞いて楽しむといった鑑賞の対象となる作品が著作権の問題かな?と思ってしまう。
今回は、その先入観をキレイに裏切る判決をご紹介します。「STOKKEのTRIPP TRAPP」という商品をご存知でしょうか?ノルウェーで生まれた幼児用のハイチェアです。基本的には小学生くらいまでのお子さんが座るために製作された商品のようなのですが、上手に使えば、“ベイビーから大人でもこの一脚でokですよ!”という優れ物のイスです。ここで、小さいお子さんやお孫さんのいるご家庭で、“あーアレか!”となるはず。画像はこちら(最高裁HPより)。
結論から言えば、知財高裁は、この「TRIPP TRAPP」というハイチェアに著作権を認めたのです。実際、私の家にもあるのですが、弁護士という肩書を離れて、あくまで単なる親父という個人的目線で見ますと、目で見て楽しむ=鑑賞という感じより、赤ちゃんから大人まで使える点で実用性・機能性を重視した商品の印象があります。実際、重宝しています。しかもデザインがもの凄くシンプルでなんだか理系的な雰囲気な商品なんですね。
子供の成長につれて何度もイスを買い換える煩わしさがない。当然、人気が出る。だからこそ、同じようなハイチェアが市場に出回り、類似品を販売する他社との間で法的紛争になったのです。“真似をするな!”って。
結論としては、ストッケのTRIPP TRAPPには【著作権がある】と判断しました。そこで、“イスに、工業デザインに関する意匠権だけでなく著作権も認められるの?”という物議を呼んだのです。一方、訴えられたライバル業者(国内業者)のハイチェアは、素人目には類似しているようにも見えますが、2本脚か4本脚かという決定的な差異を重視し、法的には【類似していない】としました。つまり、類似品は著作権法に違反しない。
今現在も、共に人気商品としてネット上では上位ランクに入っています。是非、違いを見比べてみて下さい。