何とも奇妙なタイトルからの書き出しですが、《生殖補助医療によって生まれてきた子供の母親はいったい誰なのか?》という問題です。
様々な事情の下、夫婦以外の第三者の協力を得て子供を出産するご夫婦がいらっしゃいます。よく耳にするのが、「代理出産」(夫婦の受精卵を、第三者である別の女性の胎内に着床させ、子供を産んでもらう)ですね。
作日5日、《生まれてきた子の法律上の母親は、卵子提供した女性ではなく、実際に産んだ女性とする》という内容の民法特例法案がとりまとめられました。
(朝日新聞デジタル平成27年6月26日付記事
【卵子提供・代理出産「産んだ女性が母」自民部会が了承】より引用)
実はこの問題、過去に一つのキッカケとなったケースがあります。
とある有名芸能人夫婦が、母体の事情で、別の女性に代理出産を依頼し、無事に子供が生まれたのですが、“じゃぁ、法律上の母親とは一体誰なのか?卵子を提供した芸能人女性か?お腹を痛めた第三者女性なのか?”ということが問題となり、最高裁判所が判断を下したのです。
最高裁は、一方で、子供の出生を切に望みに代理出産に賭けた夫婦に対する同情を示しつつ、他方で立法府に対して早急な法整備を促しながらも、現行の法制度と解釈論を前提に、《法律上の母親は、お腹を痛めて産んだ女性》と判断したのでした。
そんななか、自民党が、《法律上の母親はお腹を痛めて産んだ女性》とする民法 “ 特例 ” 法案をとりまとめたわけですが、聞こえとしては、「お、代理出産については例外的取扱い( 母=卵子提供者 )を認めるのか??」と思いきや、よくよく考えると、その内容は、現行法制度とその解釈の延長上ですし、最高裁判所の判断を追認した結果でもありました。
昔では想定していなかったケースについてまで法整備を施したという意味においては “ 特例 ” でしょうが、内容においては “ 特例 ” ではなかったことになりますね。ただし、あくまで法案です。
文責 弁護士 和田拓郎