退職金縛り? ~就業規則の定め~

【ご相談内容】

以前、私は、それまで働いていた会社を辞め、地元のライバル会社に転職しました。会社から慰留されたのですが、私も決心がついて転職しました。その際、会社から、「 もし辞めるとなれば会社としても無理強いできないが、ライバル会社で働く場合には退職金は減るからね。就業規則に書いてあるから」と言われ、そういうものなのかと思い、渋々承諾したことがあります。でも、私がドコで働こうかは自由なのですから、ひどくありませんか?

Q 就業規則って、会社と従業員間のルールのことですよね?

A そうですね。職務上の忠誠義務や賃金、休日、懲戒などを定めた規律のことです。その就業規則の中に、例えば、“ 同業他社で働く場合には退職金を減額する。或いは一部返還を求める ” などの定めがあったということでしょうね。

Q ご相談者がおっしゃるとおり、“ ドコで働こうか ” は個人の自由なのではないですか?退職後の話は、元勤務先には関係が無いのでは?

A そうですね。いわゆる職業選択の自由があるわけです。どんな会社に就職しようが、どんな仕事をしようが、個人の自由だ!ということですね。今後、退職金が減らされるというのであれば、やっぱり転職をあきらめようとか、転職先が制限されるというプレッシャーになりかねない・・・。

Q であれば、こんなルールはダメなのではないでしょうか?

A それが一概にダメとは言えないのです。元勤務先にも言い分があるでしょう。あくまで一般論としてですが、“ 重要な顧客情報や技術・ノウハウがライバル会社に流出されてしまっては、会社の競争力が弱まる ” という言い分がある。となると、“ 従業員の無用な流出を防ぎたいし、転職するにしても違う業種で働いて貰いたい ” という思惑がでてきます。

Q 辞める従業員の言い分も、会社の言い分も、それぞれ成り立つわけですね?

A そう。ソモソモ論ですが、退職金というのは、会社によっては出ないところもあるし、出るにしても、例えば自己都合退職と会社都合退職では支給額が異なったり、懲戒解雇では一切支払われないなんて会社も多いはずです。つまり、退職金をどのような場合にどの程度出すか、という問題は、本質的には、実は会社側で自由に決めて良い事柄なのです。

となると、会社が、退職金を減額する場面を、自己都合退職や懲戒解雇の他に一つ増やしただけのこと、とも言えるのです。

Q ということは、ライバル会社で働く場合には退職金を減らすという規定もアリ?

A 大局的に言えば、アリ。ただ、漫然と、ライバル会社で働いちゃダメね~と、広く抽象的に転職を制限するような定め方であると、先ほどの職業選択の自由を大幅に脅かすことになりますから、そのようなルールは無効と判断されることはあります。

Q 従業員側はもちろん、会社の側もどのような退職金の定め方になっているかは気をつけた方がよいですね?

A むしろ会社側は、自社利益を守るためのそのルールが、明確且つ合理的な内容になっているかを確認しておく必要があります。就業規則に書いてあるから、というだけで安心しちゃダメです。

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